お知らせ

平成24年4月 社団法人30周年記念誌発行特別講演会 「記録することの大切さ」

2012.04.26

中野区薬剤師会30周年記念を発行したところですが、先達の方々の業績をたどることは簡単なことではありませんでした。各々の記録と資料を参考にしたことは云うまでもありません。ここに法政大学サスティナビリティ研究教育機構准教授の金慶南先生をお迎えして「記録の大切さ」と題してご講演頂きました。文字通り記録の大切さを具体例を示してのお話です。

歴史というのは未来へ残してこそ歴史となるのであって、人間はせいぜい百年ほどしか生きられないが記録資料は千年も二千年も生きることができる。公害問題は高度経済成長期の産物ですが、薬害サリドマイド・薬害スモン(キノホルム)・公害水俣病(水銀汚染)これらの事件は風化させること無く、記録として残し後世に伝えていかなければなりません。薬害・公害問題は経済優先による弊害であること。このような事件を零にするために過去の歴史を知って頂き、決して風化させてはならないのです。(カネミ油症事件・イタイイタイ病等)
アーカイブスについて
古文書のことですが、環境アーカイブスとしては薬害記録について目的をもって記録することです。視聴覚で残す・刊行物で残す・新聞等で残す→媒体として記録して保存すること。ここでは全体を環境アーカイブスと言います。
お薬手帳は記録の大切さ(命の大切さ、身体を守るため)の記録手帳です。薬剤師として患者の命を守るということで役割はとても大きいのです。
住民台帳、土地台帳をなぜ作成するのでしょうか?個人の権利を保護するためでしょうか?いいえ、税金を確保するためです。国が管理する=税金なのです。
チェルノブイリの原発事故、福島の原発事故、人々が平穏に暮らしていた生活が一瞬にして消えてしまう…その現実を見逃すことなく記録して歴史として残すことが大切なのです。
インタビューも記録して保管することができます。金先生は過去に三代に亘る歴代大統領にインタビューしたことがありますが、お互いに非難の応酬になってしまい後日インタビュー記録を振り返ると誰が嘘をついているのかがわかったそうです。
国立公文書館
千代田区北の丸の国立近代美術館のそばにあり、文書館とも呼ばれ歴史的な資料としての公文書(条約・宣言・外交文書・政府関係者の報告や伝達メモ等)を保管し、公開する機関施設です。刊行された図書を収集する図書館、非文書資料を収集する博物館とは区別されています。
韓国にも民文化と国家記録管理としての公文書館が存在します。例として朝鮮時代の記録管理の歴史・日帝時期・米軍政期等記録として残し保管しています。
これらの残すということは【登録】【評価】【保存】の三つが基本システムとなっています。お薬手帳も三つのシステムが稼動して、いざという際に活用します。薬害のサリドマイド・スモン・カネミ油症等の事件は公開する体制になっています。薬害記録を構築するためには、他のものを見て参考にすることが必要です。記録を活用(振り返って)、日韓の戦後補償・賠償問題は会談で全部解決済みということになりました。
戦後の賠償責任も終戦と同時に敗戦国に記録に基づいて責任を負うことになるという事実があります。戦後記録も、日清戦争・日露戦争等も単に争ったということだけではなく、記録があると具体的な様子がわかります。
まとめ
何気ないことでも記録として残しておく、日記形式でも良いし新聞の切り抜きでも良いと思います。後になって素晴らしい記録(記憶)として活用されることもあるかも知れません。
伝統工芸や伝統芸能、職人の技、昔から伝わる様々な技術、源氏物語の画帖図(世界各国に散逸していたのがまとめられ一冊の本として出版されたこと)、これら本文から外れるかもしれませんが、共通項もあると思います。

登録・評価・保存される人々の熱意と努力に大いに拍手を贈りたいと思います。
金慶南先生、実例を交えての大変有意義なお話ありがとうございました。

(記載者: 小山功男 副会長)